先日嗄声を主張する患者様が来院されました。

嗄声を施術したことがなかったので最初は戸惑いましたが、患者様の主訴を深掘りしていったところ

胸鎖乳突筋をリリースすることによって好結果をもたらすことができたので共有させて頂きます。

 

患者 75歳女性

数カ月前に風邪をひいたわけではないのに、左喉の違和感が出現し、特に声を出すときにかすれた声になってしまう。

左喉周辺にチクチクする痛みが出る。

姿勢の特徴として、円背が強く、頭部前方位姿勢をしている。

右仙腸関節付近から右下肢に疼痛+

また医療情報として、耳鼻科を受診したが特に異常なし。

 

反回神経障害?

嗄声ということで、まず声を出すときに使う反回神経障害を疑いました。

また甲状腺の障害なども考えましたが、耳鼻科を受診されてるのでとりあえず除外。

 

反回神経は第10脳神経である迷走神経から枝分かれしている神経で、

頚部を下降し、心臓付近でUターンし、声帯を動かす神経なので反回神経と呼ばれています。

 

迷走神経及び反回神経は首周囲の筋肉などを支配していないので我々が徒手的にアプローチするのは難しそう…

 

円背姿勢と胸鎖乳突筋と声帯

しかし、先ほどの患者情報で高齢で円背が強く頭部前方位が特徴で、

胸鎖乳突筋の緊張が強く、また胸鎖乳突筋の深部に声帯がある。

また、頭部を動かした際に同部位に疼痛を訴えられたので頚部障害も併発している可能性を考慮。

 

施術内容

1.胸鎖乳突筋、斜角筋をリリース

2.上部頚椎の可動域低下していたので調整、後頭下筋群リリース

3.胸鎖乳突筋を支配している副神経をリリース

4.円背が強いことから、胸椎伸展可動域をモビライゼーション

5.右下肢痛が出ているので仙腸関節矯正

6.小脳機能がやや低下していたので眼球運動エクササイズを指導

 

などなどを施術させて頂きました。

 

副神経とは??

まずは副神経の走行から・・・

副神経脊髄核(上位3~6頚髄前角…文献によって差異アリ)から起こり上行し、大後頭孔から頭蓋内に入り、頚静脈孔から再び第一頚椎前方付近から外へ出る。その後、胸鎖乳突筋と僧帽筋上部を支配。

後屈時に僧帽筋上部に沿って疼痛が出る症例などで、副神経を意識したリリースで症状緩和を狙うこともできます。

 

 

今回は手技として斜角筋リリースと副神経リリースを紹介させて頂きます。

①中斜角筋リリース

乳様突起から頚椎横突起に沿って真っすぐ第一肋骨に伸びている。

中斜角筋を上方手母指で押さえ、下方手で患者肩を下方に牽引し癒着をはがす。

②前斜角筋リリース

中斜角筋と同様に筋線維に沿って癒着をはがし、硬結を見つけたらそこをリリースする。

③副神経リリース

上方手でC3血管突起の圧痛、硬結を触知。

その場所を母指で押さえたまま、下方手で肩を下方へ持続牽引し副神経がリリースするのを待つ。

 

またこの写真には載ってませんが、前斜角筋とその前方にある胸鎖乳突筋後縁の筋間に指を入れて癒着リリース。

胸鎖乳突筋の前縁も同様にリリース。

斜角筋、胸鎖乳突筋と皮膚の癒着も考えられたのでスキムロールで癒着をリリース。

 

上記の施術で最初は少し良くなるものの、すぐに症状が戻ってしまっていたのですが、

施術を繰り返すうちに少しずつ楽な時間が増えてきたと嬉しそうに患者様が報告してくれました。

 

 

今回のケースでは、嗄声という一見、セラピストが介入しにくいケースでしたが、

主にアライメント不良を意識した施術で改善させることができたので、皆様に共有させて頂きました!

 

嗄声が必ずこの施術で良くなるわけではないと思いますが参考になれば幸いです。