
非特異的腰痛の中でも、最近注目?されるようになってきた上殿皮神経。
皮神経ということもあって、上殿部あたりを知覚している神経です。
以前より、臨床で体幹後屈時に臀部に痛み(しかも結構痛がったり、痺れを訴える)が走る症例に苦慮していました。
そこで椎間関節症(特にL5)を疑い施術をしたところ非常に良い経過をたどる患者様が多くいました。
L5を施術して何故臀部の痛みが消失するのか?
臀部に痛みが出るということはその周囲にある神経(特に上殿皮神経)が刺激され痛みを誘発しているのでは?という推測。
それを踏まえ、L5と上殿皮神経はリンクしているのでは?という疑問を調べてみました。
上殿皮神経の解剖
T12~L5までの脊髄神経後枝の外側枝のいずれか(文献によって差異アリ)
または複数の神経根から発生する
胸腰筋膜を貫き表層へ出て、腸骨稜を乗り越え臀部の皮膚を知覚
L4とL5が圧倒的に優位な起源根であるという報告あり
下位腰椎から発生する神経根は腸骨稜内側へ
上位腰椎から発生する神経根は腸骨稜外側へ
上殿皮神経の絞扼ポイント
最も絞扼される可能性が高い上殿皮神経の枝⇒腸骨稜内側を通る枝(下位腰椎から発生、画像赤丸)
正中線から5~8cmくらい(患者サイズによって変動あり)
この腸骨稜を乗り越えるところに、線維骨性トンネル(osteofibrous tunnel)がありここで圧迫を受けやすい
上記の通り、腸骨稜内側を通る神経根は下位腰椎から発生する可能性が高い
⇒L4、L5から出ている神経根が原因になっている可能性
上殿皮神経痛の特徴的な疼痛動作
1.体幹後屈・・・体幹後屈すると椎間孔が狭小化し上殿皮神経が絞扼され疼痛が出る
2.体幹前屈・・・体幹前屈で胸腰筋膜の緊張が強いと上殿皮神経がうまく伸張できず疼痛誘発される
3.座位時痛・・・座位で腰椎後弯している方は椎間孔が狭小化されやすく疼痛が出やすい
腰部の緊張や関節の可動域が低下していると、起床時痛や初動時痛なども出やすい。
また体幹側屈や回旋時にも疼痛を訴える方もいる。
上殿皮神経痛の疼痛誘発テスト
上記で疼痛を誘発される動作を確認したら、L5orL4棘突起を軽く押さえながら、痛みが出る動作をしてもらう。
その時疼痛が減弱していれば当該関節の動きが原因になっている可能性があるためモビリゼーションや椎間関節リリースを行う。
また、腸骨稜部の上殿皮神経の枝を触診し、痛みが出る動作をしてもらう。
その時疼痛が減弱していれば上殿皮神経周辺の癒着が原因になっている可能性があるため、周囲筋肉をマッサージしたり、上殿皮神経を直接リリースする(下記参照)
上殿皮神経痛の施術
以上を踏まえ、L4,L5の神経根が腸骨稜内側を通る際に絞扼される可能性が高いことが分かってきた。
そこでL4,L5の椎間孔リリース、及び腸骨稜内側で触診できる上殿皮神経を直接リリースする施術を行う。
1.椎間関節リリース
①患者側臥位、股関節90度屈曲、膝関節90度屈曲(L4,L5を狙う場合)
②術者 (上記写真の矢印の色と説明がリンクしています)
上方手 狙う椎体の棘突起を上から下へ押圧
上方手前腕部で患者体幹を頭方へ牽引(肋骨損傷に注意)
下方手 責任椎体の一つ下の棘突起を下から上へ引っ張る
下方手前腕部で患者骨盤を尾側へ牽引
2.上殿皮神経リリース
腸骨稜沿いに触診していくと、縦方向にコリコリした神経が触診できる
特に臀部痛を訴える人の神経は触れやすくなっていることが多いためチェックする
この神経を捉え、臀部痛が再現されるかどうかをチェックする
また、この神経を捉えながら、疼痛が出る格好をしてもらい、疼痛が変化するのかをチェックする
疼痛減弱が確認出来たら、当該神経を押圧したまま患者体幹を前後屈してもらい神経リリースを行う
3.胸腰筋膜、脊柱起立筋リリース
最長筋と腸肋筋の間、腸肋筋と腰方形筋の間を上殿皮神経が下降しているので、双方筋間を意識しながら当該筋肉をリリースする
終わりに
上殿皮神経痛って最近よく聞くけど珍しいんでしょ?
自分も最初はそう思っていましたが、意識してみると意外と多くの方が上殿皮神経の問題を抱えていますし、それに関連してなのか、L5の問題を抱えている方が多いのが自分の中での印象です。
是非、臀部の痛みがある患者様がいた時にチェックしてみてください!